日本刀の反りを見ていると、日本独特の文化である造形美を感じます。それは、どこか心地の良さを感じる緊張感があるからでしょう。美術館で初めて日本刀を鑑賞する人は、なんと綺麗な曲線と日本刀の反りに心が奪われるそうです。ではなぜ、日本刀の反りは人を魅了することができるのでしょうか。
名工について書かれた書物には、ある名工の日本刀は、焼き入れされているその日本刀はとても冷たい水のように澄みきっていて、その形状は茅という植物の葉っぱのように曲がっていると書かれています。つまり、その時代には反りがあったことがわかります。茅の葉っぱと言われると、日本の秋の風情を思い浮かべます。秋風になびく茅や葦、萩などは、とても自然で優しい曲線です。日本刀の反りという造形の元になったものとして、このような自然の造形があったのではないかと思います。そのため、美術館などで日本刀を初めて見た人たちは、多種多様な言葉で、その美しく優雅な曲線を表現するほど感動してしまうのだと思います。
ある世界的な石の彫刻家が日本刀の反りは、直線を作り出そうとして自然に生まれた曲線だと言っていました。また、反りを作り出そうとして生まれた曲線は面白くない、直線らしい直線を作り出そうとして生まれた曲線だからこそ緊張感があるとも言っていました。その彫刻家の言っていることは、日本刀の持つ反りとは幾何学的で人工物のような曲線ではなく、自然な葉っぱの曲がりや枝のたゆみ、長弓の張ったときのような曲線を意味しているのだと思います。そのたわみや張りを思わせる反りだからこそ、彫刻家の言ったように独特な緊張を持っているのだと思います。またその緊張感によって、初めて見る人を魅了しているのだと思います。