次に、武士の時代にはなかった、現代人の特徴について見ていきましょう。現代の世の中を考察してみると、多くの人々が心、精神的な面において問題を抱えていると言えるでしょう。自分を見失っている人も多く、人格や品性というものを持ち合わせていないように見受けられます。そのようになってしまった原因を考えると、自己中心主義、個人主義というような放漫なエゴイズムが現代社会において混在しているからだと考えられます。意識が個人に向いている人が多く、公的精神が欠如してしまって私利私欲を目的とする傾向にあるように思われます。昔の武道の精神では、現代の自己中心的な考えが最も良くないと考えられており、戒めていました。世のため、人のために役立つ人間であること、公的に生きることこそが、人間の生き方としてあるべき姿であると考えられていました。公的に生きるという明確な目的が人間として明確にあったので、自分自身の中心に公的であることという考えを持ち日々鍛錬していたのでしょう。武道とは道徳を学ぶ手段のひとつであり、相手を思いやり、労わり、愛することを学ぶことができます。しかし、現代では、そのような道徳を学ぶという機会が教育の中から抜け落ちてしまっています。現代社会においてそのような教育による弊害が大きな問題になってきていると考えられます。公的に生きるという考えは現代社会において古い考え、個人の意見が尊重されないと非難されることもあり、だんだんと学ぶ機会がなくなってきたのでしょう。しかし、国家の中で生きること、会社や学校でうまくやっていくためには、公的に生きるという精神を学んでおく必要があるでしょう。今後の日本の発展にも、現在の個人主義だけでなく、公的主義も必要不可欠な考え方と言えるでしょう。