日本刀には、地中の働き(じちゅうのはたらき)と呼ばれるものがあります。これは、一言で言うと地刃に生じる模様のことを言います。焼入れの際に、刀身に施されている焼刃土の両や、地鉄の鍛え肌の状態、素材の偏りなどが原因で起こる模様とされているそうです。この地中の働きは、大きく分けて5種類の模様があると言われています。1つは、映り(うつり)と呼ばれるものです。地鉄と焼入れの特殊な技術によって現れる模様です。光を反射させながら平地を観察したときに、白い影のように見える状態です。鎌倉時代~室町時代の、備前刀に多いとされています。さらに刀工の流派などによって現れ方は違っており、乱れ映り、地映り、関映り、棒映り、沸映りなどがあるとされています。次に、地沸(じにえ)と呼ばれる模様は、平地の表面に砂利を撒いたようにきらきらと光る微粒子が現れる状態です。これは、刀身を熱した後、急激に冷やすことで表面に鉄の組織の変化が起こることで発生します。地景(ちけい)と呼ばれるものは、焼入れの際に変化として地に見える現象を指します。鉄と鉄の鍛え目の合わせ目に多く見られることが多いですが、鍛え肌を貫いて網目、もしくは天草状に入るものが上質な地景とされています。地斑(じふ)と呼ばれるものは、地景が杢目や板目の鍛着部に沿って現れる現象です。いくつもの微妙な模様を作り出していることから呼ばれており、他にも強弱ある地沸が変化して斑になっている状態を呼ぶこともあります。湯走りは、刃縁を離れた淡い匂や沸が地中に凝って点在しており、まだらな模様を呈しているものを指します。他にも、刃に沿った状態で、段状になって現れることもあると言われています。