日本刀を作る際に焼き入れと呼ばれる重要な過程があり、この部分の現象を理解しておくことは日本刀を理解しておくことに、はっきりと繋がるという風に言えるでしょう。一見離れて見れば、全く関係がないように見えるふたつの現象が、実は、はるか遠くで繋がっていたというような考え方をする人はいますでしょうか? 刀を作る際にも、全く同じことが言えるわけで、熱が加わる事に応じて刀が膨らみ、その膨らみに応じて加工をするというような相互に関係し合った状態をキープする中で刀を鍛錬していくというような作業は、互いに効果をカバーし合いながら、完成を目指して行くというふうに言えるわけです。焼き入れという作業は、日本刀を作る際には特に重要なものである、という風に言われることが多いわけですが、ここで生じる歪みのようなものが、結果的に日本刀の美しさを決定づける「そり」に繋がるというふうに考えていいでしょう。一般的に言われる「そり」というものはコントロールできていないのではないかという風に推測する人もいるかもしれませんが、日本刀の場合には、絶妙な処理をそりを実現するために、きちんと焼入れの過程で、計算しなければならないという風に言われるわけです。つまり、冷却をするなどした過程で、きちんとそりがどれくらいになるかということを計算しておくことが、求められているということは、間違いなく言えるかもしれません。とりわけ、このような概念は科学的にも証明されており、焼き入れという作業が刀を固くすると言う効果を持たせるために行うものである一方で、刀を完成形の形に近づけるというような役目も担っているということを知っておくことが重要だという風に言えるのではないでしょうか。このようにして、刀の形が作られるのをコントロールすることができれば、伝統工芸と呼ばれる美しい日本刀を作れるのではないかと思います。